邪馬台国検証

(22) 宋書を変質させる・・・南史

倭國、其先所出及所在、事詳北史。其官有伊支馬、次曰彌馬獲支、次曰奴往[革是]。人種禾稲紵麻、蠶桑織績。 有薑、桂、橘、椒、蘇。出黒雉、眞珠、青玉。有獸如牛、名山鼠。又有大[虫也]呑此獸、[虫也]皮堅不可斫、其上有 孔乍開乍閉、時或有光、射中而[虫也]則死矣。物産略與[偏人旁右澹]耳、朱崖同。地氣温暖、風俗不淫。男女皆 露[冠髪脚介]、富貴者以錦繍雜采爲帽、似中國胡公頭。食飲用[冠竹脚邊]豆。其死、有棺無槨、封土作冢。 人性皆嗜酒、俗不知正歳、多壽考或至八九十、或至百歳。其俗女多男少、貴者至四五妻、賤者猶至兩三妻。婦人不婬 妬。無盗竊、少諍訟、若犯法、輕者沒其妻子、重則滅其宗族。
 晉安帝時、有倭王讚遣使朝貢。及宋武帝永初二年、詔曰:「倭讚遠誠宜甄、可賜除授。」文帝元嘉二年、讚又遣司馬曹達奉表獻方物。讚死、弟珍立、遣使貢獻、自稱使持節、都督倭百濟新羅任那秦韓慕韓六國諸軍事、安東大將軍、倭國王、表求除正。詔除安東將軍、倭國王。


 南史も北史と同様、同じ作者によって作成されています。
 したがって、北史と同じ視点でこの列島の歴史が描かれています。
 また、北史は隋書を基本にしていたように、南史は宋書を基本にしています。
 ところが、北史同様、宋書にあるこの列島に関わる部分を丸写しするだけでなく、他の記述を加えることにより、文章全体の意味を違うものにしています。より正確にするために加えたというものではありません。宋書には、「倭の5王」についてのみ記述されていて、文化・風俗・地理などについては一切記述はありませんでした。そこに、一部文章を加えるだけで、宋書の元の文章を触らなくても、宋書がまったく異なった性格の史書になってしまうのです。
 上記の青い部分が挿入された文章です。
 それによると、倭国は、その先祖の出所は北史に詳しく書かれているとしています。そして、その官職名に、本来『邪馬壹国』つまり女王国であるところの官職名を書いています。その後に卑弥呼の姿やその風俗を描き、宋書の部分が続きます。
 北史の手法と同じです。女王国のことを描き、その後ろに「倭の5王」を記述することで、まるでその系統の子孫であるかのように思わせようとしています。

齊建元中除武持節都督、倭新羅任那加羅秦韓慕韓六國諸軍事、鎭東大將軍。梁武帝即位、進武號征東大 將軍。
其南有侏儒國。人長四尺、又南有黒齒國、裸國。去倭四千餘里、船行可一年至、又西南萬里有海人、身黒眼白、裸而 醜、其肉美。行者或射而食之。文身國、在倭東北七千餘里、人體有文如獸、其額上有三文、文直者貴、文小者賤。土 俗歡樂、物豐而賤、行客不齎糧。有屋宇、無城郭。國王所居、飾以金銀珍麗。繞屋爲塹、廣一丈、實以水銀、雨則流 于水銀之上。市用珍寶。犯輕罪者則鞭杖、犯死罪則置猛獸食之、有枉則獸避而不食、經宿則赦之。


 宋書の部分の後ろにも、卑弥呼の居た邪馬壹国の南に続く国を紹介する文章が加えられています。こうなりますと、倭の5王は、系統もその位置も卑弥呼が居た女王国と同一の国になってしまいます。
 北史南史ともに共通しているのは、倭国は中国の末裔であるところの卑弥呼が邪馬臺国にいて、そして、宋書に出てくる倭の5王も隋書に登場する倭王も、卑弥呼の末裔だという描き方をしています。
 つまり、夷人であるところの出雲王朝による支配を消し去っているのです。
 魏志倭人伝、後漢書、宋書、隋書を検証してきて、「邪馬台国」の意味やその場所に到達することができました。しかし、唐代に入り、梁書によって、それらの史書に描かれていたこの列島の歴史がことごとく変質させられてしまいました。その主眼は、出雲王朝の抹殺にありました。一方、その後に魏徴によって作成された隋書では、「邪馬臺国」の倭王、出雲王朝の姿が描かれており、まだ、本来の歴史認識が残されていました。
 ところが、第3代皇帝李治とその皇后武則天の時代に至り、唐王朝は、魏徴ではなく李延壽の北史・南史といった改ざんされた歴史認識の立場に立脚することにしたのです。すなわち、唐王朝そのものが、歴史改ざん勢力となってしまいました。
 唐代になって、卑弥呼のいた女王国が邪馬臺国であり、その後の倭王は卑弥呼の子孫であるとされ、この列島の都「邪馬臺国」、その出雲王朝が消されてしまいました。唐代以前の史書には、こういった記述はありませんでした。唐によって、徹底した歴史の改竄が行われています。
 それは、それ以前の大陸の王朝は、この南海の孤島を蔑視することはあっても、直接占領征服をしようという考えがなかったことにもよります。しかし、唐王朝は、東アジア制圧という動機を持ちます。そして、この列島征服の動機の根底には、今の時代の石油にも相当する「水銀」という鉱産資源の奪取という思惑が秘められていました。
 唐王朝、そしてその実権を掌握した『武則天』は、この列島をどのようにしたのでしょう。
 

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